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最高裁判所第三小法廷 昭和24年(新れ)482号 判決

主文

本件上告を棄却する。

当審における訴訟費用は被告人の負担とする。

理由

弁護人山下卯吉の上告趣意は、末尾に添えた書面記載のとおりである。

本件につき第一審裁判所が昭和二四年五月七日の公判期日(判決言渡期日)を同月一〇日に変更したこと、右公判期日の変更を弁護人に通知したことを認むべき証拠がないのでその通知がなされなかったものと認めなければならないことは所論のとおりである。しかし、第一審裁判所は昭和二四年四月三〇日の公判期日において弁護人立会の下に審理を行い弁護人は右期日において弁論をした上結審となり前記判決言渡期日が指定されたことは記録上明らかであるから、弁護人の弁護権は充分に行われたわけであって不法に制限されたものではない。従って弁護権行使の不法制限を前提とする憲法第三七條第三項の趣旨を沒却するとの論旨は、その前提を欠くがゆえに問題となる余地がない。そしてまた、論旨において主張するところの判決言渡期日を弁護人に通知しなかったことが違法であるかどうかは全く刑事訴訟法の手続違背の問題にすぎず、これをもって憲法第三一條違反の問題とすることができないことは当裁判所大法廷判決の趣旨から明らかである(昭和二二年(れ)第一八八号同二三年七月八日大法廷判決、昭和二三年(れ)第四四六号同年七月二九日大法廷判決)されば、原判決には刑訴法第四〇五條各号に規定する事由もなく、また同法第四一一條によって原判決を破棄すべき場合とも認められないので、同法第四〇八條第一八一條に従い主文のとおり判決する。

以上は、当小法廷裁判官全員の一致した意見である。

(裁判長裁判官 長谷川太一郎 裁判官 井上 登 裁判官 島 保 裁判官 河村又介 裁判官 穂積重遠)

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